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第6回 エグゼクティブインタビュー:シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 チャネル アンド マーケティング本部長 鈴木 和典 『働く場所を自在に選べるモバイル活用への展開』

2014年05月13日

第6回: 働く場所を自在に選べるモバイル活用への展開

対談者ご紹介
鈴木 和典(すずき わてん)
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
チャネル アンド マーケティング本部長

略歴:
2012年 10 月、シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社入社、クラウド ネットワーキング ソリューション事業部長 兼 パートナービジネス担当として、日本国内におけるシトリックスのクラウド ソリューション事業およびパートナービジネス全般を統括。2014年2月から現職。チャネル アンド マーケティング本部長として、シトリックスの日本市場におけるチャネル パートナー ビジネス、エグゼクティブ ブリーフィング センターおよびマーケティング全般、およびモバイル通信事業者向けトラフィック最適化ソリューションビジネスを統括。

グローバルですすむモバイルファースト

眞柄:2月にバルセロナで開かれたモバイル・ワールド・コングレス(MWC)に参加されたそうですが、どのような感想をお持ちになられたでしょうか。

鈴木:当社は今回初めてMWCに出展したのですが、携帯電話関連では世界最大級の展示会ですから、あの会場をひとまわりするだけでグローバルな勢力図がだいたい把握できました。出展者の事業領域は通信キャリア、ハード、ソフト、サービスとさまざま。そのなかで韓国、台湾、中国の企業は展示スペースが圧倒的に広いんですね。その中身はわかりませんが、とにかく勢いは感じました。それからイスラエル、フランスなどは、国として広いスペースを確保して、小規模のソフト会社を集めて出展していました。国を挙げてモバイル分野に注力しているのが分かり印象的でした。

眞柄:初出展のブースで、御社が特にアピールされたものは何でしたか?

鈴木:通信キャリア向けの製品で、3GやLTEのネットワークトラフィックを最適化する「ByteMobile」がメインでした。モビリティではBYODに対応した製品「XEN Mobile」です。モバイル・デバイス・マネジメント(MDM)に加え、同じデバイスのなかでよりセキュアに業務用と私用を使い分けられるというものです。

【製品説明】
●Citrix ByteMobile:シトリックス社が提供する通信事業者向けモバイルデータトラフィック管理プラットフォーム。高度なモバイル分析機能を使って通信事業者が加入者に優れた体験品質(QoE:Quality of Experience)を提供するよう支援する一方、モバイルネットワークのトラフィックの指数関数的な増加に対して、最良のパフォーマンス、可視性、効率性に優れたトラフィック管理を実現します。

●Citrix XenMobile:自社ビジネスをモバイル化するための革新的な方法を企業に提供します。XenMobileを使うと、IT部門がセキュリティとコンプライアンスを確保できる一方で、ユーザーはあらゆるデバイスを使用してアプリケーションやデータにアクセスできる自由を獲得できます。さらに、ユーザーは、統一的な企業アップストアを通じてあらゆるモバイルアプリケーション、SaaSアプリケーション、Webアプリケーションに対してシングルクリックでアクセスできます。これらのアプリケーションには、シームレスに統合されたメールアプリケーション、ブラウザ、データ共有アプリケーション、サポートアプリケーションも含まれます。

マルチデバイスでますます強みが発揮される仮想デスクトップ技術

眞柄:BYODへの動向も含めて、グローバルな潮流は確実にモバイル端末、スマートデバイスへと進んでいます。日本企業の動向はいかがでしょうか。

鈴木:日本の企業は「ITといえばPC」の時代が長く、いまもPCを意識されるところが多いでしょう。ところが、個人に目を向けると、これだけ多くの方がスマートフォンを持ち、PCの売り場ではタブレット型が人気です。ホモジニアス(同質)な世界から、ヘテロジニアス(異質)な世界へと移行が進み、もうデバイスを問わない時代に入ったということです。

眞柄:そうなれば、企業はPC時代のような一元管理が難しくなります。シトリックスさんは、これまで培ってきた仮想化技術などの強みが発揮されそうですね。

鈴木:当社の大手顧客は金融機関や中央省庁が中心で、厳しいセキュリティが求められます。外部にPCが一切持ち出せないので、仮想デスクトップ環境が大きな力を発揮します。初めから端末やアプリケーションのセキュア化が含まれていましたから、ここは大きな強みです。今後はそのセキュリティ技術をソリューションとして立てつけることが課題となります。
仮想化は簡単そうに見えて複雑です。サーバーリソースがどれだけ必要か、ストレージをどれだけ用意しておくべきか、朝のログオン・ストームに何が起こるかなど、ポイントがいくつもある。全体のサイジングを見誤ったり、最初の設計を間違えたりすれば、かなり面倒なことになります。

眞柄:あらゆるシステムに共通することですが、初めにいいアーキテクチャー、いい製品を選ぶことは重要ですね。

企業のITを確実に変化させるコンシューマライゼーションの波

鈴木:日本には"会社支給"の文化が根づいています。名刺をもらうように、PCやケータイは会社から支給されるものだという意識がある。それに、昔は会社のほうが家庭より高価なツールがそろっていました。計算機、コピー機、ファックス、コンピュータはどれも企業から一般家庭に広がっていきました。ところが現在は、逆に個人のほうが新しくて性能が高いツールを持つようになりました。

眞柄:コンシューマライゼーションですね。企業向けよりも、一般消費者向けのほうが高機能、高性能になるということですね。

鈴木:コンシューマライゼーションの波は、確実に企業のITに影響を及ぼします。すでに個人と企業では、レガシー化のスピードに差が出はじめています。これから企業は、外部で起きている変化をオープンに取り込んでいく姿勢が求められます。通信をよりセキュアにするなど、そこに入ってくる要素は細かいですね。

情報システムが大きくなるほど必要なセキュリティなどの専門家

眞柄:会社の規模が大きくなるほど、コンシューマライゼーションへの対応は難しくなりますね。実際のユーザー企業は、どのように(※デスクトップ仮想化を)導入されているのでしょうか。

鈴木:当社のユーザーさんでいうと、例えば社員1万人の企業が一気に全社導入することはまずありません。まず情報システム部門が入れ、次は管理部門、次は営業支援部門と徐々に広げていくのがほとんどです。このとき重要な点は、最終的に1万台になった姿を想定しながらシステム設計を進めることです。どこまでセキュリティを強化しておくかなどは本当に難しいところです。すべての分野をカバーできる人はいませんから、餅は餅屋で、御社のような会社がトータルのセキュリティを設計すればいいのだと思います。

眞柄:専門性の高い会社とパートナーを組んで進めるということですね。

鈴木:従来のシステム・インテグレーション(SI)は、元請けがいて、その下に一次請けがいて、二次請け、三次請けがいるという構図でした。そのようなタテに並ぶかたちではなく、私が考えているのはヨコに並ぶかたちです。専門性が高い会社を集め、誰かプロジェクト・マネジメントを担当してインテグレーションする。

眞柄:横串を通して、お互いに持っている知見をどんどん出し合う方式ですね。そのほうがたしかによりセキュアなシステムが設計できると思います。

働き方を変える。日本を元気にするモバイルワークスタイル

鈴木:MWCのキーノートはFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOでした。主にモバイル事業者が集まるテクノロジーのエキシビションで、彼が基調講演を務めることに時代の変化を感じましたね。彼はもちろん最先端テクノロジーを語るわけでなく、どうやって社会を変えるかという利用方法や使い勝手が話の中心でした。

眞柄:私たちが講演したら、きっとセキュリティや仮想化の技術やツールの細かい説明になってしまうでしょうね。

鈴木:日本企業はオタク化しているのでしょう。Facebookにしろ、LINEにしろ、WhatsAppにしろ、アプリとして見た場合は大したことがない。1つあればいいだろうと思っても、新しいものがどんどん生まれてくる。要は、提示のしかたやタイミングが肝心ということです。
私たちはついものづくりにこだわり、そこが日本のよさだと考えるけど、もっとやんちゃに、少し乱暴なくらいにいろんなものを試してみたらいいと思いますね。そして、みんなで育てる。日本は、ベンチャーキャピタルの流れも含めて、出る杭を打つ風潮がありますね。

眞柄:ちょっとでも成功しかけると、とにかく叩いて、批判して悦に入る傾向があるかもしれませんね。

鈴木:日本もそろそろ、他人を批判するだけでなく、アイデアを出し合う風土に変えたほうがいいですよ。もともとは、日本人のほうがアプリケーションづくりは得意だったはずですけどね。
 日本人は制限された世界だと活躍できると思います。「何でもいいからやってみなさい」と言われたら、何をするか決められなくて、ビールを飲んで寝てしまうんです(笑)。そんな育てられ方していませんから。「これしかできない」というなかで知恵を絞るのが本来は得意なんです。

眞柄:一方で日本は、ユーザーが品質に厳しいということもありますね。

鈴木:何か不具合が起これば、とにかく根本原因を追及しようとする。たしかに原因追及は大切ですが、それにかける時間や費用も考えないといけません。SIの方々も、メーカーの方々も、根本原因が解明されないと次は安心して使えないというのが一般的です。しかし完璧な世界はありませんから、どこかで妥協は必要です。ユーザー側も変わらないといけないでしょうね。

眞柄:日本人のこだわり過ぎは、少し改めたほうがいいかもしれませんね。樹木でいえば、幹の部分でなく、枝葉にとらわれてしまう。

鈴木:コンピュータのシステムは、開発に携わる多くの人々の交流から成り立ちますから、100%何から何までわかっているかというと本当はわからないものです。海外で「日本人と仕事するのは嫌だ」という人を見たことがありません。ただし、何か1つのことにこだわるとか、全体がわからないと気がすまないとか、彼らから見てやりにくい点はあるようです。

眞柄:そこは改めたほうがいいでしょうね。私たち日本人にとっても、お互いが元気になれない原因のようにも思えます。

鈴木:働き方を変えることも、日本人が元気になるためには重要だと思いますね。私たちが推奨しているモバイルワークスタイルもその1つです。会社でも、自宅でも、公園のベンチでも、同じIT環境で仕事ができれば生産性は格段に高まるはずです。そのモデルを示すことが私たちの仕事ですし、そこから日本は元気になるだろうと考えています。

●モバイルワークスタイル:シトリックスは、企業向けの製品やソリューションを提供するだけの企業ではない。シトリックスでは「Work Better. Live Better.」という彼らの経営理念からも想像できるように、自社の製品やソリューションを用いた企業の生産性向上による、社員一人一人の仕事と生活のワークライフバランスの最適化を支援すること、それを自らも実践することをずっと以前から実行している。実際にシトリックスの社員が仕事に必要なアプリやデータはすべて自社のデータセンターに集約され、会社からの唯一の指示「時間・端末・セキュリティに気をつけること」さえ守れば、いつでも、どこからでも、どの端末からでもアクセスすることができるので、社員は自らの生活に合わせた働き方をすることができる。しかも、各人の端末はデータセンターにアクセスしてアプリやデータを表示するだけなので、セキュリティのリスクもほとんどなく流行りのBYODもずっと以前から導入している。このモバイルワークスタイルは、導入した企業でも時間やビジネスの効率が向上し、労働環境に対する社員の満足度も改善されており、戦略的な人事採用にも貢献するなど大きな成果を上げている。

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