サイバートラスト ジャーナル

イベントレポート: モノのインターネットがもたらす大転換。IoT がビジネス常識を一新する。

2015.10.01
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サイバートラスト カンファレンス 2015 イベントレポート

2015 年 9 月 17 日に開催されたサイバートラストカンファレンス 2015 では「Thanks 20! Next 20!」をメインテーマとし、「これまでの 20 年」に感謝するとともに「これから先の 20 年」について考える機会となった。
来るべき IoT(モノのインターネット)は、いったいどんな社会なのか?その未来図の輪郭を浮き彫りにするため、日本の IoT に関わる各分野のエキスパートを招き、議論を深めた。

基調講演
「我が国のサイバーセキュリティ戦略」
衆議院議員
自由民主党 IT 戦略特命委員会事務局次長 中川俊直様
パネルディスカッション
「Next 20 〜次の 20 年に向けて〜」
モデレータ:
日本経済新聞社 執行役員電子版担当 渡辺洋之様
パネリスト:
旭川市長 西川将人様
インテル株式会社 取締役副社長 宗像義恵様
株式会社ラック 専務執行役員 CTO 西本逸郎様
サイバートラスト株式会社 代表取締役 眞柄泰利

ダイジェスト動画


<ごあいさつ ~ 基調講演>

Thanks 20! Next 20!

サイバートラスト株式会社 代表取締役 眞柄泰利

様々なデバイスが安全につながる IoT(モノのインターネット)システム。これは「一社での実現はむり、オープンイノベーションで皆様の様々な要素技術をつなげていくことが重要である」と、今後の指針を示した。そして、これからの 20 年、その協業で得た「日本品質を携え、アジアを目指す」と、その意気込みを明らかにした。


安全がもたらす成長。「我が国のサイバーセキュリティ戦略」

カンファレンスは、自由民主党 IT 戦略特命委員会事務局次長 中川俊直議員の基調講演「我が国のサイバーセキュリティ戦略」で幕を開けた。
冒頭、議員は「米国政府のサイバーセキュリティ対策費が現在 140 億ドル(約 1 兆 7,000 億円)であるのに対して、日本は内閣府全体でも 325 億円」---。日米の予算規模の差に日本の現状を憂慮しつつ、海外で頻発するサイバー攻撃の事例を紹介しながら、その対策強化の重要性を訴えた。
同時に、こうしたセキュリティ対策費を「従来の費用から、未来への投資」と捉え直す発想の転換も大切だと指摘し、本年度、1 月 9 日に施行された「サイバーセキュリティ基本法」の解説を通じて、「安全な IoT(モノのインターネット)システムの創出が、今後の経済成長を促す」と力強く語った。

 


<パネルディスカッション>

パネルディスカッションには、モデレータに日本経済新聞社 執行役員電子版担当 渡辺洋之氏を迎え、パネリストにインテル株式会社 取締役副社長 宗像義恵氏、株式会社ラック 専務執行役員 CTO 西本逸郎氏、そして、サイバートラスト株式会社 代表取締役 眞柄泰利が登壇した。

Next 20 〜次の 20 年に向けて〜

「20 年前はどうだったか?」---。まず、モデレータの渡辺氏がこう口火を切った。
「当時、Windows 95 が発表され、パソコン大ブームが起きた」「シリコンバレーへ行くと、ネットスケープがブラウザーを作り、インターネットの扉を開いていた」---。 それと前後して携帯電話も普及期を迎えたが、「いま、PC は生き残っていても、携帯はガラケーと言われ、終わったかのごとく語られている。ネットスケープも無くなり、20 年経つと IT 業界は大きく様変わりしてしまった」と、身を持って体験した激動の時代について語る。
「そう考えると次の 20 年も、きっとすごいことが起きる」---。 そこに皆が抱く希望と不安、それを見渡すために、「次の 20 年をどう見るか?」と、渡辺氏はパネリストの方々に問いかけた。

IoT の時代に、一人勝ちは無い。オープン・イノベーション・プラットフォームが開く未来。

渡辺氏の問いかけに、まず宗像氏が半導体業界の立場から答えた。
「ムーアの法則は今も生きています。18 ヶ月に 1 回、回路の集積度は倍になり、トランジスタのスウィッチング・スピードは 30 〜 40 %速くなる。そして、10 年前のスーパーコンピュータと同程度の性能を手のひらサイズの小さなスマホが手に入れた」と、これまでの技術革新の成果を語った。
「この変化が IoT の時代になると 500 億台規模で起こる。現在の PC やスマホは約 50 億台だから、ざっとその 10 倍。こうなるとコンピューティングパワーは、水道やガスや電気や空気と一緒で、社会インフラとなり、あって当たり前、ほぼ只同然で世界中に供給されるようになる」---。それが半導体業界から見た 20 年後の未来図である。
「こうなると IT の価値は事業会社が創造する時代になる」と、時代の趨勢を示した。
そして、「ムーアの法則と並行して、これを支える基盤技術が、電力供給と通信回線とセキュリティだ。ただし、発電所は 18 ヶ月で倍になれないので、ある程度リミットが掛かる。また、通信回線、特に無線は有限資源なので、ここでもボトルネックが生じる。そして、最も大切なのが 500 億台を安全つなぐためにのセキュリティ対策」となる。
いずれにしろ IoT の実現には、オープン・イノベーション・プラットフォームの構築が不可欠である。「これからは一人勝ちの時代では無い。アライアンスを組んで取り組む事が重要になる」と結んだ。

OS より下の、脳幹でつなぐ信頼。チップレベルに組み込むセキュリティ対策。

宗像氏の発言を受け、次に、セキュリティ技術者の立場から、西本氏が 20 年後のイメージを話し始めた。
「IT 産業というより、IT で既存のビジネスをやる。本当にそうゆう時代になるのだろうと思う。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の統計資料によると、米国の IT 技術者は、28 %がベンダーにいて、72 %が事業者にいる」---。西本氏はこの数字を引用し、宗像氏の言う、「事業会社による IT の価値創造」を裏付けた。
また専門家の視点から、注目を集める日本年金機構の問題についても言及し、内閣の「サイバーセキュリティ戦略本部」がまとめた調査を基に、時系列を追って分析し、今後のセキュリティ対策の課題を浮き彫りにした。
そして話題は、20 年後の予測へ。
「Windows 95 の出た 1995 年からの 10 年は、インターネットの黎明期だった。ラックはこの 10 年間赤字を垂れ流した」---。当時、セキュリティへの世間の関心は薄かったからだ。
「Windows XP が出た 2005 年からの 10 年は、インターネットの利用期といえる」---。そしてセキュリティの必要性が叫ばれた時代でもある。
ひるがえって、いま、スマホが定着し、SNS が隆盛を極め、ドローンやウェアラブルが登場し、IoT への期待が高まっている。更に、来年度からのマイナンバー導入が国会で可決された。氏は、2015 年を「日本が IT で管理をしていく決意をした重要な年である」と位置づけた。
さて、「こうなると、これからのセキュリティは、OS よりさらに下の脳幹部分、これまでだれも意識してこなかったチップレベルから対応しなければならない。端末同士が信頼できる仲間を確認しながらつながり、いざというときは即座に遮断できる。そんな仕組みを組み込んで、セキュリティを考えていかなければならい」と、自身の描く 20 年後の未来図を語った。

あなたは、本当にあなたですか?リアルとバーチャルがセキュアにつながる未来。

同じテーマで、眞柄が話を進めた。「宗像氏の言うように、つながる端末が 500 億、それを利用する人が 70 億とか 80 億になると、『本当にあなたは、そこに居るのですか?』ということが問題となってくる」と、氏の提示した圧倒的なスケールをセキュリティの専門家として受けとめた。
仮に、セキュリテイに不安であることを理由に、ユーザーが匿名のままネットに居続けたとすると、IoT がもたらす新たなサービス価値はだれも享受できなくなってしまう。バーチャルとリアルの区別無く、生活者が実名で、「安心してインターネットにつながることができる社会インフラが重要だ」と訴えた。
「いま、我々が取り組んでいるのは、いつ、どこで、だれが、どのデバイスを使ったか。バイオメトリックスも絡めて、誰が使ったかを認証できる『Secure IoT Platform』の構築です。そのために、様々な企業や団体と協業しながら、実証実験に取り組んでいる」と言う。
例えば「東芝や旭川市と一緒に取り組む、ストレスケア遠隔診断システム」「クルマの自動運転を見据えたドライバーズ認証」「イベント会場のスタッフ認証と配置の見える化は、2020 年の東京オリンピック・パラリンピックを目処に、実用化を目指している」「さらに、今年から旭川市と一緒に取り組み始めた、農作物育成栽培」など、多岐に渡る事例を紹介した。

ドローンで取り組む、IT 農業。IoT がもたらす、地方創生の可能性。

ここで、タイミング良く、多忙な公務の合間を縫って旭川市の西川将人市長がインターネット中継で登場した。
「サイバートラストさんとのお付き合いは、昨年度から開始されたストレスケアの実証実験からです。本年度は、新たに IT とドローンを使った画期的な IT 農業を展開しています。食味がよく全国から高い評価を頂いている『ゆめぴりか』ですが、今後、更にすばらしいお米が生産されるのではないかと大いに期待しています」と、サイバートラストと取り組む実証実験について期待を語った。
そして最後に「今回、カンファレンスのテーマが『Next 20』とうことで、まさに日本の社会が抱えるストレス問題、あるいはワークライフバランス、地方創生、そうした課題の克服に IoT を役立てていきたい」と、今後の抱負を語った。

500 億台のつながる社会は何時来るのか? すでに人工都市を作り始めたアメリカ。

次に渡辺氏は「500 億台の端末がつながる社会は、いったい、いつ来るのか?」と、皆に問いかけた。
西本氏は「地震予知より難しい」と笑いながら前置きし、「オリンピックの前までには、かなり衝撃的なことが起きるのではないか」と答えた。
「同感です」と、渡辺氏は大きくうなずく。「いま、スマホの普及率は 50 %ですが、裏返せば、半分の人は、まだ新聞やテレビや雑誌を見ている。つまり均衡状態です。でも、スマホはオリンピックまでには必ず 100 %に近づく。その時は必ず大きな変化が起こる」と続けた。
最後に、渡辺氏は「これから来る社会はだれも体験してしたことがない。だから、ちょっとでも知りたいと思い、シリコンバレー行きました。すると彼らは、人工都市をつくり、実証実験を始めようとしている。『実験をしたものが、ビジネスも標準化も勝ち取れる』という考えが、いま、アメリカでは相当広がっています」
「ですから、みなさんも協力して、実験の場を作ってください。そして、眞柄さんが言うような日本品質をつかみ、みなさんのビジネスを成功させ、日本を元気にしてください」と熱く語り、パネルディスカッションを締めくくった。


インターネットにつながる端末が 500 億台になり、ウェアラブルコンピュータのみならず様々なセンシング端末などが膨大な情報を生成し続ける世界になった場合、情報の実在性証明が必要になるのは合理的選択なのかもしれない。そんな思いがよぎるカンファレンスだった。
そもそも、IoT のコンセプトは、さほど新しくない。RFID、ユビキタス、人によっては、1984 年に発表された TRON の「どこでもコンピュータ」までさかのぼる人もいる。もし 2020 年 東京オリンピックまでに革新の第一の波が来るなら、長年の夢がまもなく実現するということだ。映画で描かれた世界も、もはやフィクションではないところまで来ているのである。


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